答えのない大きなテーマをコンセプトにした
写真展が銀座・資生堂ギャラリーさんで開催されています。
◆◆◆荒木経惟 往生写集―東ノ空・PARADISE◆◆◆
会期: 開催中~ 12月25日(木)毎週月曜休
時間: 平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00
会場: 資生堂ギャラリー
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
http://www.shiseidogroup.jp/gallery/exhibition/index.html
アラーキーの愛称で知られる荒木経惟さん。
60年代から幅広い被写体にカメラを向け
常にセンセーショナルな話題を振りまき
社会の注目を集め続けてきた写真家です。
1964年に下町の子ども達を撮った写真集
『さっちん』で第1回太陽賞を受賞。
1971年の愛妻・陽子さんとの新婚旅行を記録した
『センチメンタルな旅』では
自らの日常を日記のように記録した
「私写真」という独自の世界を切り開きました。
以降、今日に至るまで膨大な数の作品を発表されています。
展覧会タイトルの「往生写集」は
平安時代の僧侶・源信が著した仏教書『往生要集』(985年)から
想を得た荒木さんの造語です。
源信は多くの仏教の経典や論書などから
極楽往生に関する要文を集め
死後に極楽往生するためには一心に仏を想い
念仏を唱えることが大切と説きました。
のちにその教えは、我が国の浄土思想の
基礎となったと言われています。
今回の「往生写集」展は
豊田市美術館(4/22-6/29)、新潟市美術館(8/9-10/5)
そして資生堂ギャラリーの3館合同で開催する企画展で
それぞれに異なるサブタイトルと出品作で構成されています。
2009年の前立腺癌の発症と摘出手術
その後の愛猫チロの死や東日本大震災の経験などが
荒木さんに自らの「死=往生」を意識させ
それを機にこの合同企画展が実現しました。
最終開催地の資生堂ギャラリーでは
「死=往生」から「再生」に向かっていく
荒木さんの現在の心境を捉えた作品を中心に展示する予定です。
「東ノ空」は、東日本大震災後
亡くなった方への鎮魂を願うと同時に
被災地の復活を祈りながら
彼が毎朝自宅の屋上から撮り続けている最新作です。
これから新しい時を刻む東ノ空は
静かに生命の力が湧いてくる
まさに再生・復活のシンボルといえるでしょう。
一方の「PARADISE」は
一見暗闇の中に色鮮やかな花が咲き誇っているかのようですが
実は、朽ちかけた花と人形を写した生と死の物語です。
「花は死の一歩手前が最も官能的」と語る荒木さんが
移ろいゆく花の姿を人の生命にたとえ
はかなさゆえの愛しさや、かけがえのなさを捉えた作品です。
また、本展のためにこの夏撮り下ろした
「銀座」もご覧いただけます。
「死」を意識し往生の準備を始めた荒木さんが
人生を振り返りながら豊田、新潟と旅を続け
資生堂ギャラリーから「再生」という新たな旅に出かけようとしています。
荒木さんの旅立ちにご期待ください。
関連企画
荒木経惟『花椿』ポートレイト + ぺインティング
『花椿』で連載中の、穂村弘の対談「Talk」にご出演いただいたゲストを
荒木経惟が撮影した作品展を開催します。
写真に施した荒木のペインティングを直にご覧いただけます。
会期: 開催中~12月26日(金)
会場: 資生堂銀座ビル2階
☆コンシェルジュ・バミのものしりになれる?!メモ☆
荒木経惟(あらきのぶよし)氏
【略歴】
1940年 東京都台東区生まれ
1963年 千葉大学工学部写真印刷工学科卒業、同年カメラマンとして電通に入社
1964年 下町の子ども達を撮った『さっちん』で第1回太陽賞受賞
その後フリーとしてエネルギッシュな活動を続けている。
また、近年は美術館での展覧会が相次ぎ、
海外でも高い評価を受けている
【主な受賞歴】
1994年 日本文化デザイン大賞、1999年織部賞
2008年 オーストリア科学・芸術勲章を受章しオーストリア科学・芸術アカデミーの生涯会員となる
2011年 第6回安吾賞
2013年 「荒木経惟写真集展 アラーキー」で毎日芸術賞特別賞
写真は撮った人の心を映し出すものと言われます。
死のその先にある「往生」に込められた想いを
自身の“目”である写真を通して表現した荒木さん。
第一線で活躍し続ける荒木さんが切り取った「生と死」
普段意識の遠く及ばないところにあるもの。
その本質に触れイマジネーションを刺激したいと思います。
(c)Shiseido